絵本・旅行コラム(パパママコーナー)

おばけはこわい?こわくない?

『おばけのジョージー』 福音館書店
ロバート・ブライト作・絵 光吉夏弥訳
石川晴子 (関西大学非常勤講師)

アメリカの東部、ニューイングランドにある古い農家にホイティッカーさんと奥さんが住んでいます。夜になると、決った時間に階段がミシリと鳴り、広間のドアがギイーときしります。すると、猫のハーマンはねずみをとる時間だなとわかります。ふくろうはこの音を聞いて目を覚まします。そしてホイティッカーさん夫妻は、そろそろ寝る時間だ、と思うのです。じつは、この家に住んでいるおばけのジョージーが、階段の決った段をミシリといわせ、ドアを動かしていたのです。この家のご主人はジョージーが住んでいることを知りません。

 

 

 

ところが、ある日、ホイティッカーさんは階段を修繕し、ドアの蝶つがいに油をさしました。いつもの時間になっても、階段からも居間のドアからも音が聞こえてきません。ハーマンはいつねずみをとりはじめていいのかわからなくなりました。ふくろうのオリバーも目を覚ます合図が聞こえてこないので、起きられません。ホイティッカーさん夫妻も、寝る時間の見当がつかなくなり、困ってしまいます。
いちばん困ったのはジョージーです。この家に住んでいるわけにはいかないと、引越しをしようと、あちらこちらを見にいきます。けれども、ある家にはとても怖いおばけが住んでいました。おばけより怖いおじいさんの住む家もありました。ジョージーはふるえあがります。

そして、とうとうある日、牛小屋に移っていたジョージーのところに、オリバーがうれしい知らせを伝えてくれます。また階段が鳴りドアがきしるようになったというのです!

 

 

 

実際におばけを見た人は、私たちのなかどれほどいるでしょうか?ほとんどの人は見たことがないでしょう。それなのに、小さなこどもでも、おばけのことは知っています。知っているだけでなく、おばけが好きだという人が少なくありません。漫画の主人公になるくらいですから。“怖いもの見たさ”という言葉があるくらいですから、人間は、もともと怖いことやものが好きなのかもしれません。たいていのこどもは怖い話が好きです。「こわいお話して!」という声にこたえる話はたくさんあります。聞いている間は、とてもこわそうな表情をしているのですが、お話が終わると、「こわくな~い!」と叫びます。
おばけのジョージーは、おばけなのにふつうのこどもと同じように、おばけがこわいのです。でもおばけなので、人に姿が見えませんから、気づかれずに活躍することができます。自分のこどもたちのためにこの絵本を作ったロバート・ブライトは、こどもの心のなかにひそんでいるおばけのイメージをよくわかっていたのかもしれません。ブライト家のこどもたちだけでなく、大勢の子供たちがジョージーが大好きになり、その要望にこたえて、ジョージーの絵本は8冊作られています。
ところで、あなたはおばけを見たことがおありでしょうか?おばけは、ほんとうにいるのでしょうか?

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