絵本・旅行コラム(パパママコーナー)

ねこがいっぱい

『ねこがいっぱい』 福音館書店
グレース・スカール 作 やぶきみきこ 訳
石川晴子 (関西大学非常勤講師)

絵本を読み始めるのは、何歳くらいからでしょうか?
最近では、あかちゃんの検診のときに図書館のひとがあかちゃんに絵本を読んであげ、おかあさん、または保育者に絵本のことや図書館のことを説明する「ブックスタート」を実施している自治体がふえてきました。親といっしょにあかちゃんが絵本や手遊びなどを楽しむという行事を行っている図書館も少なくありません。
ひとは、生まれて間もないあかちゃんのときから絵本を楽しむということが広く知られれるようになった、といってよいでしょう。実際、図書館や家庭文庫(小規模の私設図書館のようなものと考えてください)で、あかちゃんといっしょに絵本を読んでいるひとたちは、あかちゃんが、おかあさんに抱かれて絵本の絵に見入り、読む声を聞いて、たのしんでいることを実感していると、報告しています。書店に行ってみると、あかちゃんのための絵本がたくさん並んでいて、選ぶのに苦労するほどです。
では、あかちゃんはどんな絵本をよろこんで読むのでしょうか?あかちゃんは、ことばで「この本が好き」とか「これはおもしろくない」とか言ってくれません。あかちゃんの反応から「あかちゃんはこんな本が好き」だと判断して、経験からあかちゃんのための絵本を選んだり、また、作ったりしているのが実状でしょう。

 

アメリカでは、かなり早く、1920年代30年代からこどもたちのためのおはなしや絵本がさかんに出版されるようになりました。当時は、ピアジェなどの発達心理学が注目されはじめ、こどもたちひとりひとりを生かす新しい教育方法が導入されています。幼いこどもたちのことばや心理を詳細に知り、研究を深め、その成果に基づいてこどもたちのための美しいたのしい絵本が数多く出さるようになったのです。それらの絵本のうち、何冊かが日本語に訳され、現在でも手にすることができます。

 


そのなかの一冊が『ねこがいっぱい』です。「おおきいねこと」「ちいさいねこ」「しましまねこと」「ぽちぽちねこ」「せいたかのっぽに」おちびちゃん」「ふとったねこと」「ほそいねこ」「ねこがいっぱい みんないっしょに」「にゃーお」と、ことばはとても少ないのですが、一匹ずつことばどおりのねこが画面に次々と出てきます。見たところは、どれもみんなちがうのに、共通しているのは、どのねこも「にゃー」となくこと。ちがっていても、ねこだとわかるのは、そのなき声。ねこを見分ける重要なポイントのひとつが「にゃーお」という声なら、いぬは? ちゃんと『いぬがいっぱい』という絵本もあります。

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