健康・病気コラム(パパママコーナー)

子どもたちのユッケ等、生肉への注意点

子どもたちのユッケ等、生肉への注意点

病気 感染症腸炎 小児科の診療をしているとよく出会う病気です。 感染症腸炎と言っても、サルモネラ腸炎、キャンピロバクター腸炎、ノロウィルス腸炎など原因は様々で、症状の程度も様々です。 注意しなければならないものは、腸管出血性大腸菌による出血性腸炎です。 出血性腸炎は腸管出血性大腸菌という、特定の型の大腸菌が原因となり起こる腸炎です。代表的なものが0-157です。他に0-111、0-26などもあります。主に牛がこの菌を持っています。 人に移る場合は、ほぼ100%、口から菌が入って感染するパターンです。 菌が体に入ってから下痢などの症状が出るまでの潜伏期は3日から8日です。 症状は下痢、血便、そして盲腸ではないだろうかと思われるほどの激しい腹痛です。 怖いのは、合併症として溶血性尿毒症症候群というものがある事です。これは、腸管出血性大腸菌感染により腎不全症状、神経症状を来たすもので、時に致死的になります。この合併症は下痢などの消化器症状がでて4日から7日後に起こることが多いです。

 


100個の菌で感染!

ところで、腸管出血性大腸菌は、健康な牛の腸にも確認される菌です。肉をさばく業者さんは、もちろん牛の腸の菌が、牛の肉に付かないよう細心の注意を払うわけですが、やはり完全に菌が肉に付かないように、とはいきません。生で食べるものは、表面をそぐということですが、確かに肉の中に0-157がいるわけでなく、牛の腸の菌が、肉の表面に付いているわけなので、表面をそげば理論上はいなくなります。しかし包丁やまな板にも菌は付着するし、目に見えない菌の数をゼロにするのは難しい事だと思います。 例えばサルモネラという菌は、かなり大量の菌(大体1万個くらい)が体の中に入らないと下痢などの症状はでません。しかし腸管出血性大腸菌は100個くらいの少数の菌でも発症してしまいます。75度の火で、1分の加熱で死滅してしまうので、充分に肉を焼けば感染する確率はぐっと下がりますが、低温に強い為に、冷蔵庫でも生存するという事も知っておいてください。 幼稚園に通園しているくらい小さい子供さんは、ユッケなどの牛肉を生で食べないようにしましょう。 ササミなどの生の鶏肉も幼稚園児は避けた方がいいと思います。 補足ですが、大腸菌というのは悪者でもなんでもなく、人間の腸の中に生きている無害な菌です。下痢を起こす大腸菌は、特定の型の大腸菌によるものです。(O-なんとか。というのは、大腸菌の型です)腸の中以外の場所にとびだして悪さをする事はありますが(例えば膀胱に入って膀胱炎になったり)しかし普段は腸の中で、ビタミンを合成したり、消化を助けたり、頑張ってせっせと働いています。 大腸菌=病気、大腸菌=不潔 ではないですよ。

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